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極小超軽量の国産アルコールストーブはどのように生まれたか──BLUENOTE⁺stove開発者に聞く「限界への挑戦」

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──まずは経歴と、アウトドア製品の開発に関わるようになったきっかけを教えてください。


アウトドア用品事業部 仲 亮典(以下、仲):大学生の頃からクライミングが好きで、アウトドアショップの店員やクライミングジムのスタッフなどを経て、株式会社エバニュー(以下、エバニュー)に入社しました。当初から所属はアウトドア用品事業部で、現在は入社15年目です。最初は仕入れや営業などから携わり始め、自社製品はもちろんのこと、海外の輸入品も含めたアウトドアに関する様々なプロダクトに携わってきました。製品開発には5年ほど前から携わるようになり、これまでにアウトドアウェアやバックパック、クライミングギアなど様々な商品の開発を担当してきています。



──超軽量の国産アルコールストーブであるBLUENOTE⁺stoveは、2022年2月の発売直後には即完売するなどの注目を集めました。製品の特長を教えてください。


仲:外径5cmという極小サイズで、13gという超軽量でありながら1回の燃料注入(最大15ml)で、約300mlのお湯が5分で沸く火力を備えていることです。カップの横から炎が出るタイプのストーブは「サイドバーナー式」と呼ばれており、ゴトク無しでも使用可能です。本燃焼したストーブの上に直接クッカーを載せると、10個の穴から炎が人の手のように広がり、クッカーを包み込みます。この「Blueの手」が、「BLUENOTE⁺stove」の名前の由来です。

青い炎で燃焼するのは、高効率で燃焼している証でもあります。この点火と燃料節約をサポートするのが「Pre-Heating plate」で、併用することで操作性が格段に向上します。プレート自体も7gと軽量で、湯沸かしに必要な道具をひとまとめにしても、100g以下になる「Under 100g set」の実現が可能です。


──「Under 100g set」は、どのような製品の組み合わせで実現できるのでしょうか。


仲:BLUENOTE⁺stove(13g)、Pre-Heating plate(7g)、風防アイテムの「Ti 9G Windshield」(9g)、クッカーの「Ti 400FD Cup」(50g)、その蓋でありお皿としても使える「mulTidish」(13g)。この5点の組み合わせで、合計92gの「Under 100g set」になります。この中に、湯沸かし2回分となる燃料30mlのボトルを入れても約120g、専用のケース「NPクッカーケース 400FD」(31g)に収納しても全体で約150gと、卵2個程度の重さです。

山に行ってお湯を沸かそうとすると、オーソドックスな手法であればガスボンベやバーナーヘッドが必要となり、合わせて3〜400gの重さになってしまいます。ところがBLUENOTE⁺stoveの場合は、その約1/3以下の重さでアウトドアを身軽に楽しめます。すべてがTi 400FD Cupに入るコンパクトさも特長で、実はBLUENOTE⁺stoveは、このTi 400FD Cupへの収納を第一に考えた開発でもありました。


──BLUENOTE⁺stoveは、どのようなきっかけで開発が始まったのでしょうか。


仲:新製品のアイデアを検討する中で「自分で試作できるものはないか」と考えるうちに「サイドバーナー式のアルコールストーブはどうだろう?」と思いつきました。この形式のストーブは、海外には既存製品があり、日本国内でも自作している方がいるので需要があるのではないかと考え、まずはやってみようと試作したのが最初でした。エバニューで最も売れているクッカーが、Ti 400FD Cupなのでこの中に収納できるよう開発を進めていきました。


──試作と検討はどのように進めていったのでしょうか?


仲: 最初は、家にある空き缶で作ってみました。まずちょうど良いサイズを探して高さをカットして、側面に自分で穴を開けて試してみたところ、意外によく燃えました。この「空き缶で作る」こと自体は、昔からある手法の一つです。ただ、手作りでは品質が安定しにくい面があります。そこで「安定した品質のサイドバーナー式の国産アルコールストーブを自社で作ってみよう」と、実際に企画を進めていきました。



──企画するにあたり、どんなターゲットを想定していたのでしょうか。


仲:企画時はちょうどコロナ禍で、キャンプのニーズが高まっている時期でもありました。アウトドア市場も盛り上がりを見せる中で、ウルトラライトや珍しいものが好きなユーザーに「楽しんでもらえれば」と思い、開発を進めていきました。利用シーンとしては、山の中でカップラーメンを食べたり、ハイキング中にコーヒーを沸かして飲んだりと、軽量な装備でアクティビティを楽しみたい場面を想定しています。カップラーメンのレギュラーサイズに必要なお湯が330mlなので、それをベンチマークとして開発していきました。「この小ささでどこまで出来るか」という限界への挑戦でしたね。


──ここにある試作品は一部とのことですが、開発を進める中で最も難しかったのはどのような点でしょうか。


仲:燃焼孔の大きさを決めることですね。小さい方が燃費は良いのですが、機械で量産しようとするとそこまで小さな穴は開けられない。どこまで小さくできるか、かなりの検証を重ねました。加えて「カップに穴を開けること」自体にも工夫が必要でした。アルミ素材は柔らかいため、一つずつ穴を開けていくと歪んでしまいます。そこで、カップを取り囲むようにして10個の穴を一気に押し開ける製造工程にすることで、歪まない均等な穴開けを実現しています。その他にも孔位置の割り出しやカップ底にある隙間のサイズなど、ディテールまで細かく計算しながら微調整を繰り返して改良を重ねていきました。


──「こういう人にも使ってほしい」「こんな展開にしていきたい」など、BLUENOTE⁺stoveに関する期待や展望について教えてください。


仲:アウトドア初心者の方にも使っていただければと思います。中級者向けと思われがちですが、燃料を入れてライターで火を点けるだけなので、意外と初心者の人でも使いやすいアイテムです。

一方で火を使うものである以上、使い方を間違えると大事に至る可能性もあります。だからこそSNSなどでユーザーの利用状況のキャッチアップもしています。動画などで正しく安全な使い方を啓蒙していくことで、様々なアウトドアシーンで活用いただけるようになると良いと思います。


<参考>

株式会社エバニュー Facebookページ

https://www.facebook.com/permalink.php?story_fbid=pfbid02UEMwyE8qrUVqC5hV1CwYDJu4FMeWHayJu756P3ERojTRxJ48VaxJAK7qMagFn74wl&id=748860185242276

BLUENOTEstove商品ページ

https://evernew-product.net/products/detail.php?product_id=5577

Pre-Heating plate商品ページ

https://evernew-product.net/products/detail.php?product_id=5578

「ストーブの特長」特集ページ

https://www.evernew.co.jp/outdoor/evernew/stove/feature.html

EVERNEW ULTRALIGHT MOUNTAIN EQUIPMENT 2023

https://www.evernew.co.jp/catalog/book/Outdoor_Equipment/?pNo=52

特集 アルコールストーブ|EVERNEW ONLINE SHOP

https://evernew-product.net/upload/feature/stove/index.html

BLUENOTE stove 店頭先行発売(Hiker’s depot 公式サイト)

https://hikersdepot.jp/news/12861.html/

クセが強い!エバニューのブルーノートストーブには不思議な魅力があるんです【私的神アイテム】(CAMP HACK)

https://camphack.nap-camp.com/8106

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