株式会社エバニュー創業100周年 インタビュー
常務取締役 岩井満洋「エバニュー製品を通じてさらなる感動の体験を」

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――岩井常務の経歴をお願いいたします。

わたしは2017年の入社で、以前は自動車メーカーに勤めていました。そこで担当していた業務は自動車同士がぶつからないようにするシステムの研究開発や、自動車を安全に制御するためのシステム開発(プログラミング)などです。自動車とスポーツ器具で開発対象は異なりますが、一貫してモノづくりに従事しています。



――100周年を迎えるにあたって、これからの方針などをお聞かせください。

これまでの100年では学校体育や登山用品の分野でのモノづくりに注力してきました。良いモノを作ろう、皆さんに喜んでいただこう、そういった信念のもとに進んできたと思います。過去の100年の良いところは今後も継承し、同じようにこだわっていきたいところです。さらに、この先の未来を見据えた時に、エバニューの商品を通じて新しい体験や価値もあわせて提供していきたいと考えています。




――商品を通じた新しい体験や価値とは具体的にはどのようなことですか?

エバニューの商品を実際に使って「あんなことができた」、「こんなこともできた」という感動体験をユーザーの皆さんにしていただけるか?というところに重きを置きたいと考えています。エバニューの柱である学校体育、登山用品どちらにおいても、感動体験をお届けする「ことづくり」にこだわっていきたいです。



――「ことづくり」、とてもわくわくする響きですね。

はい。例えば、学校体育では器具の提供に留まらず、日頃の授業が先生や子どもたちにとってより充実した体験となるようにソフト面もサポートします。そのためには学校授業の現状を知らなくてはなりません。先生方が集まる研究授業に参加させていただく機会が多くあり、授業における課題や逆にこんな良いことがあるといった話を聞かせていただきました。


とても印象的だったことは、先生方は子どもたちの「できた」という喜びをとても大切にしているという点です。そうした喜びを引き出したいと日々願っていること、またそれ自体が先生方のやりがいでもあると。わたしたちメーカーがその「できた」にも協力できることがあるのではないかと思っています。




――成功体験はまたやってみたいという前向きな気持ちに繋がります。「ことづくり」は実際に事業としてあるのでしょうか。

はい、大きくふたつあります。ひとつは「にこすぽ」と名付けた当社オリジナルの運動プログラムです。一般的に運動プログラムと言いますと、どうやって体を動かすかという部分にフォーカスしているものですが「にこすぽ」はどう考えるか、どう判断するかといった思考の分野までも考慮することで心と体を結びつける運動プログラムを実現しています。友達と比べることではなく、子ども自身の「できた」を積み重ねることで楽しく成長を続けていただきたいです。ふたつ目は、体育とデジタル技術を融合させたプログラミング授業です。



――体育とデジタル技術の融合…… それは一体どのようなものでしょう。プログラミングは岩井常務の得意分野ですね!

融合の方法は様々な方法が考えられます。今回はエバニューの看板商品であるライン引きに着目し、プログラミングで制御するライン引きロボットを試作しました。当社社長の「100周年を機に究極のライン引きを作りたい」といった後押しもありました。ライン引きの「きれいな線を引きたい」「ラインを引く手間を減らしたい」といった課題をライン引きロボットが解決する。ロボットは子どもたちがプログラミングで制御する。子どもたちの「できた」を導くこと、ラインで道をひくことから、「みちびくプロジェクト」と名付けました。


小学校では2020年度、中学校では2021年度からプログラミング教育が必修化されました。しかし、国語、英語、算数と同じように教科として「プログラミング」が新設されるものではありません。プログラミング教育の目的は、①プログラミング的思考を育む ②身近な問題の解決やより良い社会を築こうとする態度を育む ③各教科等での学びをより確実なものとすることです。その目的を達成させるための手段は各教育委員会や学校に委ねられているため、プログラミングが得意な先生がいらっしゃる学校ではクリエイティブな授業をされているようです。一方で、プログラミングの経験がない先生にとっては試行錯誤されるケースが多いようです。そんな課題を当社だからできるアプローチで解決できないか思案しました。




――そこで、ロボットにプログラミング制御でラインを描かせる授業というわけですね。

実は今夏8月に小学生3人、中学生2人に協力していただき、ライン引きロボットの実証実験を行いました。①プログラミング的思考の導入、②ロボットの動きをプログラミングを通じて命令する、③机上のシミュレーションで思い通りのラインが引けているか確認する、④グラウンドで実際にロボットを動かして線を引く、といった順番で、必要に応じて戻ることもありました。子どもたちは始め「プログラミングって何?」という状態でしたが、短い時間でもプログラミングの単純な考え方を理解し、徐々にロボットを思い通りに動かせるようになることで小さな「できた」を積み重ねている様子はとても嬉しかったです。

特にグラウンドでロボットがラインを描いている最中に、子ども自身が作成したプログラミングの命令を受けて動くライン引きロボットに対して「がんばれー!」と応援し、ラインが引き終わった後に自然に沸き起こった拍手は、私自身の「できた」を導いてもらえた瞬間でした。


問題をクリアする……簡単過ぎても難し過ぎてもいけませんので、ゴール設定の難しさは感じました。しかし、子どもたちのできることを増やしながら徐々に導くことがこのプロジェクトの根幹でもあるので、実用に向けてさらなる改善をしていきたいと思っています。




――まさに「みちびくプロジェクト」ですね。

現段階ではまだ華々しい成果を波及できてはいませんが、こうした試みはエバニュー社員にとっても大きな刺激になることを期待しています。ライン引きといえば、グラウンドで先生がカラカラと引いていたイメージがありますよね。今回のように実際にプログラミングをして、ライン引きにモーターを付けてロボットとして制御しようとするのは、これまで考えてもみなかったことだったと思います。


「実際にやってみるとできるものなんだ」、「そんなふうに考えても良いんだな」そういう気づきがあったのではと。100年の長い歴史を通じ、固定観念ができてしまったはずです。しかし、そこを打破したり、枠組みを外すきっかけになることを期待しています。



――長年の積み重ねの価値はもちろん、社名のEVER増々NEW新しいを忘れないということですね。

そういった意味では、若手社員が生き生きとしているのが、ここ数年の良い傾向かなと思っています。100周年を記念しての社員運動会実施の発案は彼らからでした。今までになかったことだから、こういったことをしてはダメではなく、今自分たちがやりたいことを行動に移す力。そういったことに繋がっていけば嬉しいです。


それはモノづくりも同じことで、常識を疑うというところから始めてみる、前例がないことも許容した上で試してみようよ、と。失敗はつきものです。実際にロボットライン引きもたくさん失敗しています。そうした精神が新たな文化を創っていき、「ことづくり」のプロジェクトにも成果をもたらすのではないかと思います。




――先日のインタビューで若手社員の皆さんの快活さを眩しく感じました。さて、エバニューもうひとつの柱である登山用品部門のほうではいかがでしょうか。




ひとつの例ではありますが、100周年を記念して「B.C. stove」というボルドーバーナーをベースにしたガソリンストーブを限定で100個販売いたしました(すでに完売)。エバニューの商品は割と尖っているものが多いと思いますが、ボルドーバーナーは最たるもので、シンプルな構造ながら火を安定させるのが難しいストーブです。一般的には扱いづらいものですが、無駄なものを一切廃した潔い外見など無骨な格好良さがあります。


元はスイス人のジョセフ・ボルドー氏が1939年に作り上げた、往年の名作ですが、現在は入手困難です。良いモノを作りたいという創業当時の精神や面白いことをしたいという思いがありましたので、工場の職人と元の商品を研究し、試行錯誤を重ねながら何とか開発に成功し、100周年記念商品として間に合いました。

火をつけることは簡単にできますが、炎を安定させるところが腕のみせどころです。燃料はホワイトガソリンですが、自分自身の手で温めて気化させる必要があります。そうしたひとつひとつの手順も、自然の中でじっくり火を楽しむ感動体験になるかなと思っています。


登山用具、アウトドアの部門は「なりたい自分を実現する感動体験」というテーマに掲げています。登山用具そして学校体育もともに、これからもエバニューらしい製品を開発し続けて、たくさんの感動体験をお届けしたいと思っています。