株式会社エバニュー創業100周年 インタビュー②
代表取締役 岩井大輔「これまでの100年、これからのエバニュー」

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――創業から現在まで時代と共に様々な商品を取り扱われてきたわけですが、今は学校体育用品とアウトドア用品、ふたつの柱が事業としてあります。

僕が入社する少し前までは野球用品が売上の多くを占めていました。プロ野球の人気も相まって、問屋自体がオリジナル商品を作っていましたね。スポーツといえば野球。とにかく野球という感じだったようです。野球用品の人気が落ち着き始めた頃に、次はなんだ? と。そこで学校体育用品、プール用品に移行していきました。ビート板は10万枚も販売していましたね。あとは陸上競技で使うハードルやスターティングブロック(短距離走で使用する)なども扱い始めました。学校の先生にリサーチしながら必要とされている用具を商品化していったんです。綱引きのロープやグラウンドを整備するブラシとかレーキも。どんどん増えていきました。体育用品に限らず、学校で使うものだったら整備や清掃に使う用具も取り扱ってもいいんじゃないかとなっていったんです。



――多様な学校備品を扱う中で変遷を感じたものなどはありますか。

用具に関して変化を感じたのは、生徒のケガへの対応です。たとえばバレーボールの支柱とネット。生徒が支柱に頭をぶつけてしまったとか、そうしたケガが多く発生するようになって支柱にカバーを付けるようになりました。ネットはワイヤーを手動で巻き上げて張りを出す仕組みになっていたものですから、手を切って大怪我をしてしまったこともありました。バレーボールは特に用具の事故が多かったです。弊社に限らず他メーカーも数多く対応していたと思います。現在は、支柱はカーボン製のものが売れているんです。元は鉄製だったものがアルミ製に変わり、今はカーボン製。軽量化されましたが強度を加えるとしなる素材なので一長一短あります。用具の耐久試験はもちろん行いますが、安全性は特に考慮しなければならなくなっています。

素材の変化でいえば跳び箱も以前は木製でしたが、跳び越えられない子どもが怪我をしてしまうので、硬いスポンジ素材のものも多くなっています。上部の手をつくところは3色に色分けされていて、黄色の部分に手をついて跳ぶ、といった指導ができるように。ケガが起こって新たな製品が生まれるということがよくありますね。



――同じものでも素材の選択肢が増えたのですね。

今年弊社で発売した「自然に還るグラウンドポイント」も同じような経緯で開発しました。グラウンドにラインを引く目印にグラウンドポイントという小さな杭を地面に打ち込んでおくのですが、それが原因の事故が立て続けに起きてしまったんです。グラウンドポイントは、小さなヒモがついた金属製の釘のようなもので、打ちっぱなしにしておくものです。錆びたグラウンドポイントが地面に出てきて、そこに子どもがつまずいて転んだり、スライディングをしたりして大ケガをしたという事例がありました。これはまずいということで、生分解性プラスチックを使った新たなものを考案しました。





――立て続けに起きるケガへの対応は確かに急務です。利用者である子どもたちの安全より優先されることはありませんね。

変化といえば子どもたちの運動能力についても変化が起こっていますね。運動が苦手な子どもはいつの時代もいますが、ボールを投げられないとか決まったところにピタッと止まることができないといった基礎的な運動、体の使い方が思うようにできない子どもたちが増えてきました。そのような状況を踏まえて、「にこすぽ」という体つくりの運動プログラムのプロジェクトを始めたんです。やっぱり「できた!」という感覚を味わって運動が楽しい、体育が好きと思って欲しいので。ボールが投げられない子どもだったら、どんな運動をすればいいかなどの運動プログラムを作っています。近年は子どもに限らず、大人もパソコン作業の仕事が増えて運動不足になっていますから、ゆくゆくは大人に向けにもこういうものがあってもいいかなと思っています。

企業によっては社員旅行の代わりに運動会を行うところも増えていますから、道具を使って体を動かして面白いことをやっていれば健康維持に役立つのではないかと。人びとの健康に貢献することが会社の企業理念ですから、そこに結びつけていきたいなっていうのはありますね。





――さて、続いてはもうひとつの柱であるアウトドアの事業についておうかがいします。

1980年代のRVブームやオートキャンピングの人気があった頃は、アメリカのアウトドアブランドやスキーブランドの代理店業務もやっていましたね。テントなども扱っていて数多く販売しましたが、模倣した製品に席巻されてしまったこともありました。そのうちに中国製の安価な製品が市場に出るようになって……。そんなこともあって、量産にそこまでの技術を伴わないものはどんどん安価に作られてしまうなというのは痛感しました。



――そういう意味では、チタン製のクッカーの製造は技術を要するものですね。世界初のチタン製クッカーの発売は1994年のことです。

現在は他のメーカーもチタン製の商品を販売しています。薄さを0.4ミリに加工する技術は中国産でも可能になっているようで、今は0.3ミリの勝負になってきています。当時はチタンを加工できる工場がなかなかなく、素材は硬いのですが、プレスをかけるとすぐに破けてしまっていました。それを可能にしたのは新潟の燕三条の技術でしたね。

最初のキャンプブームの時に並行してマラソンのブームもありました。そのうちに、ただ普通の道を走っているんじゃ面白くないと、山の中を走る人が増えてきました。距離も100キロメートル以上の長距離です。弊社もどちらかというと、そうした場面で使う用具を扱っていこうと方向転換しました。1グラムでも軽いものを求める層でしたので、商品も軽量なものですね。ソロで山登りに行く人も増えましたし、そうした人を応援するグッズを出していきたいなとは思っています。ニッチなマーケットだとは思いますが。



――いわば専門性の高い製品に注力していきたいと。

そうですね。あとは最近のトレンドということでは、町工場がキャンプで使うような台やテーブルを製作したりして自社ブランドを立ち上げていますね。技術がありますからアウトドア業界もうかうかしていられません。そうしたサードパーティが出てきていて、欧米からブランドが上陸するといった従来の流れではなく、国内発のガレージブランドが台頭しています。

また、道具も単に丈夫さや使いやすさだけでなく、デザイン性など何かもうひとつふたつの付加価値をユーザーは求めているように思います。写真映えするかということとか。弊社で開発したアルコールストーブ「BLUENOTE⁺stove(ブルーノートストーブ)」もそんな一面もあります。青い炎が手のひらのように出るのが特徴です。シンプルな構造ですが思い描いた炎にするためにかなり試行錯誤しましたね。湯を沸かしたりすることが本来の目的ですけれど、火をつけるところから儀式のように楽しみは始まります。今年リリースした「B.C.stove」は、150年近く前にあったボルドーバーナーから着想を得たガソリンストーブなので、好きな方は多いと思いますよ。




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